実況編

一昔前の大会といえばただトーナメント方式で対戦をこなすだけでした。
最近では実況付き、さらには観戦用モニターが設置されて、動画がアップされる場合もあるから驚きです。


ただこの実況というのがなかなかに難しい。自分もバイト店員をしていた時、何度か実況に挑戦したことがあります。が、まるで駄目でした…


まず、実況をやる上で必要なことは“盛り上げる”ということでしょう。
これは当たり前で、盛り下がるようなら帰っていただきたい。
Kー1などのアイドルがぎゃーぎゃー。これは不快極まりなく、もうしおしお。
個人的な感情のみを口にするというのは、マイクを使った只の自慰にすぎないと思います。
この場合、一方的な応援になってしまっていることも多く、相手サイドにしてみれば聞き苦しいことこの上ありません。

しかし、例外もあるかもしれません。

先日行われた格闘維新のGGXXでは火九さんが実況を務めておられました。
彼のマイクは非常に気合が入っていて、ヒート時は何を言っているか聞き取れないほど。
しかし、ゲームに対する愛情からでしょうか。その語調から、シリーズをやりこんでいない自分にもプレーヤー間の攻め時・守り時がなんとなくわかりました。
特に決勝で小川氏の対戦では
「小川リーィチ!!」(あ、次の2択で死ぬのか〜)
「小川あぶな〜い!!!」(見ればわかるし)
などの、かすれ声での絶叫にしびれたものです。
個人的にですが、この火九さんの実況は素晴らしいと思いました。
氏が関西プレイヤーなのに、関東勢力である小川氏の視点での実況が面白く、
またなにより一方的な解説であるにもかかわらず、悪意が少しも感じられなかったことが大きかったように思います。
さらにはそれが、本来アウェーである地方のプレイヤーに対して出来ているのだから驚きです。やられてしまった方が(しょうがない)みたいな感じだった事も印象的でした。
GGの世界は余り詳しくないので、的外れな意見だったら恥ずかしいところです。




話を戻すと…、




最近の実況では、対戦を面白おかしく実況するという場面を見ます。
これはリターンが大きく、非常にしょぼい対戦が面白くなる場合もある。
例を挙げるなら、もはや伝説として語りつがれるウォーズ対マッチ戦(Gup主催スト3シングル大会)があります。
問題の試合ですが、内容だけ見ると双方が下手すぎて見るに耐えません。
しかもマイクだけを聞くとラウンド間には「おお〜っとここでウォーズマンスマイル!」など意味不明。どちらかが一生懸命な真面目くんだったら戦意喪失です。
しかし大会は大盛り上がりで、ビデオで見ても色あせない興奮がそこにはあります。プレイヤー双方の技量及び精神力を考えると、誰にもダメージを与えずゲームを盛り上げた名実況だったのではないでしょうか。


ただこの成功は稀有のパターンであって、苦肉の策に近い。
ニュートン」で「松田さん」そして「ウォーズとマッチ」であったからこそ、です。
真似してはいけない部類に入ると思います。



実況をやる人の想いは様々でしょう。
それがもし本当に「盛り上げたい」という大義名分の下に行われるのであれば、聴衆だけでなく、主役であるはずのプレイヤーのことも考えて欲しいと思います。
そして、プレイ環境や実況内容にまで配慮がなされていれば最高です。

具体的には
マイクの音が大き過ぎてゲームの音が聞こえない。
これでは大会はおろか、実況というよりただの072ショーでしょう。

また、実況内容で、
プレイヤーが(何だよ、あっち側の応援かよ)と感じれば、もうその人はその店に来ないでしょう。


それが大きなイベントの予選であったりすれば、以降参加することも無いでしょう。



単に面白いような実況。
それは対戦をネタにした笑い取りになっていることもあります。
難しい話ではありますが、危惧する必要もあるのではないのでしょうか。


そうしたことからプレーヤー離れが招かれているとすれば、
些細ではあっても、少しずつ業界を衰退させてしまいます。
そして、その些細なダメージが致命傷になる可能性を、狭いコミュニティでのイベントに係わる人間は認識しなければならないと思います。

実況は、大会の盛り上げという点で効果が少なくありません。
しかし、必ずしも無くてはならないものとも思いません。
過去に西スポで行われた大将ウメVSリキ・にっと・ヌキは、100人近くが固唾を呑み、試合を見守ったものです。実況がなくても、最高の感動がありました。

実況はいらない、という事ではありません。
生産性のある想いからくる行動なのであれば、
それが実際、本当に生産的であるかどうかを、今一度見つめ直してくれれば幸いです。



長くなりましたが、業界の発展を心より願う次第です。